ベトナムの通貨コードは「VND」。
「VN」はVietnam(ベトナム)、「D」はDong(ドン)を表しています。
今回は、通貨コード「VND」と、その背後にある歴史と制度、文化的背景を紐解いていきます。
通貨コード「VND」の構成
「VND」は、ISO 4217で定められた通貨コードです。
- VN:国コード(Vietnam)
- D:通貨名「ドン(Dong)」の頭文字
つまり、VND = Vietnam + Dong。
国名と通貨名を組み合わせた、標準的な構成です。
なぜ「Vietnam」なのに「VN」なのか?
「VN」は、ベトナムの英語名「Vietnam」に由来するISO 3166-1 alpha-2の国コードです。
非常に直感的で、英語圏でも「VN」と略すケースが多いため、
国際的にも分かりやすく自然なコードとして定着しています。
他に候補となるような「VT」「VM」などは別用途に使われる恐れがあり、
「VN」が最も無難で実用的だったといえます。
「ドン(Dong)」の由来
「ドン(Đồng)」は、ベトナム語で「銅(どう)」を意味する言葉です。
この名称は、かつて銅で作られていた貨幣(銅貨)に由来しており、
通貨が金属であった時代の記憶を現代に残す通貨名となっています。
なお、正式には「Đồng Việt Nam(ドン・ベトナム)」と呼ばれます。
通貨記号「₫」の意味
ベトナム・ドンの金額表示には、以下の通貨記号が使われます:
- ₫:ドンを表す独自の通貨記号(「d」に横棒)
たとえば「10.000 ₫」は「1万ドン」を表し、
国内の価格表示や領収書、請求書などで広く使われています。
「VND」は国際取引用、「₫」は国内日常使用――
それぞれの場面で最適化された表記が、通貨としての機能性を高めています。
ベトナムの通貨制度と歴史
- 1946年:フランス領インドシナ時代を経て、北ベトナムで最初の「ドン」導入
- 1978年:南北統一後に現在の「ベトナム・ドン」へ統一
- 発行機関:ベトナム国家銀行(State Bank of Vietnam)
- 為替制度:2000年代以降は管理された変動相場制を採用
ドンの現在
- ベトナム・ドン(VND)は、ベトナムで唯一の法定通貨です。
- 2025年5月現在、1米ドル ≒ 24,000 VND 前後で推移しています。
- 通貨単位の桁数が非常に大きく、「100,000ドン ≒ 約600円」といった感覚になります。
まとめ:VNDに刻まれた通貨の記憶
- VNDは「Vietnam + Dong」の構成
- 「VN」は直感的かつ衝突のない国コード
- 「ドン」は「銅」を意味し、かつての貨幣素材に由来する
- 記号「₫」はベトナム独自の文化的通貨記号
VNDというコードは、金属貨幣の記憶と、社会主義国家としての歴史的文脈を背負った通貨の象徴です。
関連する通貨コード
- KHR(カンボジア・リエル)
→ インドシナ半島で共にフランスの影響を受けた国の通貨 - LAK(ラオス・キープ)
→ 同様に社会主義体制のもとで整備された東南アジアの通貨 - CNY(中国・人民元)
→ ベトナムにとって最大の貿易相手国であり、経済的影響が大きい通貨
コメント