2025.05.23
シリアの通貨コードは「SYP」。
「SY」はSyria(シリア)の略で、「P」はPound(ポンド)を表しています。
今回は、通貨コード「SYP」と、そこに込められた歴史と制度の背景を見ていきます。
通貨コード「SYP」の構成
「SYP」は、ISO 4217で定められた通貨コードです。
- SY:国コード(Syria)
- P:通貨名「ポンド(Pound)」の頭文字
つまり、SYP = Syria + Pound。
このコードは、国コードと通貨名の頭文字を組み合わせた、一般的な構成となっています。
ポンドの歴史と通貨制度
ポンドの由来
「ポンド(Pound)」の名称は、イギリスの通貨単位に由来しますが、
シリアではフランスの委任統治時代(第一次世界大戦後)に通貨制度が整備され、
「シリア・リーブル(livre syrienne)」というフランス語表記が使われていました。
その後、「リーブル」から「ポンド」へと名称が変化した一方で、
通貨記号には今なおフランス語の名残が見られます。
通貨記号「LS」や「£S」の意外性
SYPというコードを見ると「Syria Pound」と分かりますが、
実際の通貨記号は「LS」や「£S」と、コードとは一致しない表記が一般的です。
これは、かつてのフランス委任統治下で使われていた「リーブル(livre)」の影響によるもの。
「LS」は livre syrienne(シリア・リーブル) の略であり、
通貨表記にフランス語が用いられていた時代の名残です。
さらに、「£」はイギリス・ポンドの記号であり、
それとフランス語の「S(syrienne)」が結びついた「£S」も併用されています。
つまり、コードは現代の国際規格に基づいて“Pound”を示し、 記号はかつての宗主国フランスの「Livre」を引きずっている――
この食い違いこそが、シリア・ポンドに刻まれた複雑な歴史を物語っているのです。
近代のポンド
- 1919年:フランスの委任統治下で「シリア・リーブル」が導入される。
- 1947年:シリアがIMFに加盟し、通貨を米ドルに固定。
- 2007年:ポンドはIMFのSDR(特別引出権)に連動する制度へ移行。
ポンドの現在
- シリア・ポンドは、シリア国内で唯一の法定通貨です。
- 通貨価値は長年の内戦や経済制裁により大幅に下落しており、
2025年5月現在、1米ドル ≒ 約13,000 SYP というレートになっています。
まとめ:SYPに込められた歴史と多層性
- SYPは「Syria + Pound」の構成
- 通貨名は「ポンド」だが、記号には「リーブル」の名残(LS, £S)が残っている
- フランスとイギリス両国の影響が刻まれた、歴史的に複雑な通貨体系
- 現在も独自の通貨として、シリア経済を支える存在
SYPというコードは、時代と国境をまたぐ通貨の「記憶」を今に伝える存在です。
関連する通貨コード
- EGP(エジプト・ポンド)
→ 同じくポンドを通貨単位とする他国の通貨 - SDG(スーダン・ポンド)
→ 同じくポンドを通貨単位とする他国の通貨 - GBP(イギリス・ポンド)
→ ポンドの元祖であり、各国の通貨名称に影響を与えた存在
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