ポーランドの通貨コードは「PLN」。
「PL」はPoland(ポーランド)の略です。「N」はZłoty(ズウォティ)の頭文字ではありませんが、なぜでしょうか?
今回は、通貨コード「PLN」と、そこに込められた歴史と制度の背景を見ていきます。
通貨コード「PLN」の構成
「PLN」は、ISO 4217で定められた通貨コードです。
- PL:国コード(Poland)
- N:通貨名「ズウォティ(Złoty)」の頭文字ではありません
ここで「Nって何?」と思う方もいるかもしれません。
実はこの「N」は、1995年に実施された通貨の再評価(リデノミネーション)によって導入された、
“新しいズウォティ(New Złoty)”を意味する文字です。
それ以前の通貨コードは「PLZ」で、
1995年に「1万PLZ = 1PLN」として通貨を切り下げ、新たなスタートを切ったタイミングでコードも「PLN」に変更されました。
このように、通貨コードの末尾に「N(New)」をつけるケースは他にもあり、
- MXN(メキシコ・ペソ)
- TRY(トルコリラ / Y = Yeni〈トルコ語で「新しい」〉)
など、通貨改革を経験した国によく見られる形式です。
「PLN」というコードには、ポーランドが過去のインフレを乗り越えて
新しい通貨体制へ踏み出したという、制度的な背景が込められているのです。
ズウォティの歴史と通貨制度
ズウォティの由来
「ズウォティ(Złoty)」の名称は、ポーランド語で「金の」「黄金の」を意味する形容詞に由来します。
14世紀から15世紀にかけて、ポーランドでは外国の金貨を「ズウォティ」と呼んでいました。
1496年、ポーランド議会(セイム)は、30グロシ(grosz)に相当する国内通貨「ズウォティ」を制定しました。
近代のズウォティ
- 1919年:ポーランドは独立を回復し、新たな通貨「ズウォティ」を導入することを決定。
- 1924年:ズウォティが正式に流通を開始し、旧通貨「ポーランド・マルカ(Polish marka)」を置き換える。
- 1950年:第三次ズウォティが導入され、旧紙幣を100対1の比率で交換。
- 1995年:インフレ対策として、1万旧ズウォティ(PLZ)を1新ズウォティ(PLN)とする再評価が実施される。
通貨記号「zł」について
ズウォティの通貨記号は「zł」で、金額の前に付けて表記されます。
例:zł 100
ズウォティの現在
- ズウォティは、ポーランド国内で唯一の法定通貨として使用されています。
- ポーランドは2004年にEUに加盟しましたが、現在のところユーロ導入の具体的な予定はありません。
→ 政府と中央銀行は、独自の金融政策を維持することを重視しています。
まとめ:PLNに込められた歴史と安定性
- PLNは「Poland + New」の構成(PLZ → PLNへの移行による)
- 中世の金貨に由来する歴史的な名称「ズウォティ」
- 独立回復後の経済安定化の象徴として再導入
- 現在も独自の通貨として、ポーランド経済を支える存在
PLNというコードは、ポーランドの歴史と通貨改革の記憶を今に伝える存在でもあります。
関連する通貨コード
- EUR(ユーロ)
→ ポーランドが将来的に導入を検討している通貨。
※今後記事化予定 - CZK(チェコ・コルナ)
→ 中欧の近隣国で使用されている通貨。
※今後記事化予定 - HUF(ハンガリーフォリント)
→ 中欧の近隣国で使用されている通貨。
※今後記事化予定
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