メキシコの通貨コードは「MXN」。
「MX」はMexicoの略として分かりやすいですが、最後の「N」は何を表しているのでしょうか?
また、「ペソ(Peso)」という名称や、なぜドルと同じ「$」記号が使われているのかも気になるところです。
今回は、通貨コード「MXN」に込められた意味と、ペソの歴史・記号の由来を探っていきます。
通貨コード「MXN」の構造
「MXN」は、ISO 4217という国際規格で定められた通貨コードです。
その構成は以下のとおり:
- MX:国コード(Mexico)
- N:通貨の要素(Nuevo=新しい)
つまり、MXN = Mexico + Nuevo という構成になっています。
これは、1993年の通貨改革で導入された「新ペソ(Nuevo Peso)」を反映したものです。
ペソ(Peso)という名前の由来
「Peso」はスペイン語で「重さ・重量」を意味します。
これは、かつての銀貨が「重さ=価値」の基準だったことに由来しています。
16世紀、スペイン帝国は「8レアル銀貨(8 reales coin)」を鋳造し、
これが「1ペソ」と呼ばれ、スペインの植民地を中心に広く流通しました。
通貨改革:MXPからMXNへ
1993年、メキシコは深刻なインフレーションへの対応として、
旧ペソ(MXP)を切り下げ、1,000 MXP = 1 MXN のレートで新通貨「Nuevo Peso(新ペソ)」を導入しました。
コードも「MXP」から「MXN」へと変更され、
その後1996年には「Nuevo(新しい)」の表記が廃止されましたが、コード「MXN」はそのまま維持されています。
なぜ「$」記号? ペソとドルの不思議な関係
「メキシコなのにドル記号?」と思われがちですが、実はその逆。
「$」記号は、もともとペソのものだったのです。
● 起源はスペインの「ペソ(ps)」略記
- スペイン帝国の「ペソ銀貨」は、「ps」と略して書かれていた
- それが書き崩され、「S」が「P」の上に重ねられた形に
- これが現在の「$」記号の起源とされています
● アメリカドルもペソに影響を受けていた
- アメリカ合衆国は独立初期、スペインの8レアル銀貨(1ペソ)を公式通貨として流通
- そのため、ドル(Dollar)という名前は新しくつけたが、記号はペソと同じ「$」を継承
つまり、メキシコペソとアメリカドルは「$」記号の共通の祖先を持っているのです。
スペインドルとスペインペソは同じもの?
実はこの2つ、本質的には同じ通貨を指しています。
- 「ペソ」= スペイン語での正式名称(peso de ocho reales)
- 「スペインドル」= 英語圏が呼んだ名称(Spanish dollar)
- 「ピース・オブ・エイト」= 8レアル銀貨を意味する通称
スペインドルは英語の呼称で、
アメリカやアジアなど、スペインの植民地以外の地域で広く通用していた国際通貨でもありました。
表にまとめると:
名称 | 使用言語 | 意味・由来 |
---|---|---|
ペソ(peso) | スペイン語 | 重さ、価値単位(8レアル銀貨) |
スペインドル | 英語 | スペインの銀貨をドルになぞらえた通称 |
Piece of Eight | 英語 | 1ペソ = 8レアル → 銀貨の通称 |
アメリカドル(USD) | 英語 | スペインドルを元に設計。記号も継承 |
名称は「ドル」でも、記号「$」はペソ由来。
名前と記号が別ルーツから来た、ちょっと不思議な通貨がアメリカドルなのです。
通貨記号とコードの使い分け
- 記号:国内では「$」や「Mex$」と表記される(例:$50、Mex$50)
- コード:為替市場や送金では「MXN」が正式に使用されます
まとめ:MXNに込められた通貨改革と文化の重なり
- MXN = Mexico + Nuevo(新ペソ)
- 「Peso」はスペイン語で「重さ」=銀貨由来の名称
- 1993年の改革でコードがMXP → MXNに変更
- 「$」記号は、実はペソの略記「ps」が由来
- アメリカドルもこのスペインペソの銀貨を基に設計され、記号も引き継いだ
後書き
最後の文字と通貨名が違うときは、大抵の場合単位の切り上げ、もしくは切り下げが行われています。
たった3文字ですが、そこから歴史が垣間見えるのはとても面白く感じます。
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