モロッコ・ディルハムはなぜMADなのか?|通貨コードの由来


モロッコの通貨コードは「MAD」。
「MA」はMorocco(モロッコ)の略で、「D」はDirham(ディルハム)を表しています。

今回は、通貨コード「MAD」と、その背後にある歴史、そして国コード「MA」に込められた意味を紐解いていきます。


通貨コード「MAD」の構成

「MAD」は、ISO 4217で定められた通貨コードです。

  • MA:国コード(Morocco)
  • D:通貨名「ディルハム(Dirham)」の頭文字

つまり、MAD = Morocco + Dirham
この構成は、国名と通貨名の組み合わせとして典型的な形です。


なぜ「Morocco」なのに「MA」なのか?

モロッコの国コード「MA」は、一見すると「Morocco」の頭文字とは異なります。
これは、ISO 3166-1 alpha-2(国コード)が単に英語表記に基づくのではなく、歴史的・言語的背景を反映しているためです。

モロッコの国名表記は以下のようになっています:

  • 英語:Morocco
  • フランス語Maroc(マロック)
  • アラビア語:المغرب(Al-Maghrib)

モロッコは20世紀前半までフランスの保護領であり、現在もフランス語が広く使用されています。
そのため、国際基準である国コードもフランス語の「Maroc」由来で「MA」が選ばれたと考えられます。

さらに、「MO」はモンゴル(Mongolia)に割り当てられているため、重複回避の観点からも「MA」が適切だったのです。


ディルハムの由来と変遷

古代ギリシャからイスラーム世界へ

「ディルハム(Dirham)」という言葉は、もともと古代ギリシャの貨幣「ドラクマ(drachma)」に由来しています。
これがアラビア語に取り入れられ、「ディルハム」として中世イスラーム世界に広く流通しました。

モロッコでのディルハム

モロッコでは、1974年に旧通貨「モロッコ・フラン」に代わってディルハムが導入されました。
これはフランスからの独立(1956年)後、自主的な通貨制度を確立するための重要な一歩でした。


通貨記号「د.م.」と「DH」

「MAD」という通貨コードとは別に、モロッコ国内での表記には以下の2種類が使われています:

  • د.م.:アラビア文字で「ディルハム・マグリビ(Maghrebi Dirham)」の略
  • DH:ラテン文字で「DirHam」の略称

これらは公文書、商品価格、為替レート表示などで併用されており、多言語社会としてのモロッコの特徴を反映しています。

つまり、「MAD」は国際取引用のコードであり、
国内では「DH」や「د.م.」といった記号が日常的に使われているのです。


モロッコ・ディルハムの制度と特徴

  • 1974年:モロッコ・フランに代わり「ディルハム」が導入
  • 中央銀行:バンク・アル=マグリブ(Bank Al-Maghrib)が発行を担当
  • 為替制度:過去には米ドル・ユーロとの変動幅制限があったが、
    2018年より柔軟な変動相場制へ移行開始

ディルハムの現在

  • モロッコ・ディルハム(MAD)は、モロッコ国内で唯一の法定通貨です。
  • 2025年5月現在、1米ドル ≒ 10 MAD前後 で推移しています。
  • 一部観光地ではユーロも受け入れられますが、ディルハムが基本通貨です。

まとめ:MADに込められた文化と通貨の接点

  • MADは「Morocco + Dirham」の構成
  • 「MA」はフランス語「Maroc」由来の国コード
  • 通貨名「ディルハム」はギリシャ・アラブ世界を経た歴史ある名称
  • 記号にはアラビア語とラテン文字の併用(د.م. / DH)
  • 独立後の通貨制度確立と、為替自由化に向けた改革の象徴でもある

MADというコードは、モロッコの多言語的・多文化的な歴史と、通貨の進化を映し出す鏡です。


関連する通貨コード

  • AED(アラブ首長国連邦ディルハム)
     → 同じ「ディルハム」でも起源や制度が異なる通貨
  • DZD(アルジェリア・ディナール)
     → モロッコと同様、フランスの影響を受けた北アフリカの通貨
  • TND(チュニジア・ディナール)
     → 北アフリカ地域における通貨名の傾向比較に適した存在

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