チリの通貨コードは「CLP」。
国コード「CL」に続く「P」は、通貨名「ペソ(Peso)」を表しており、特に意外性はありません。
しかし、このコードには1970年代の通貨改革や、消えた通貨コード「CLE」の歴史が関係しています。
今回は、通貨コード「CLP」の背景と、チリの通貨制度にまつわる変遷を辿ってみましょう。
通貨コード「CLP」の構造
「CLP」は、ISO 4217で定められた3文字の通貨コードです。
- CL:国コード(Chile)
- P:通貨名の頭文字(Peso)
つまり、CLP = Chile + Peso という構成になっています。
「ペソ(Peso)」の由来とスペインドルとの関係
「Peso」はスペイン語で「重さ」を意味し、もともとは貴金属の重量に基づいた通貨単位です。
16世紀から19世紀にかけて、スペイン帝国は「8レアル銀貨(Piece of Eight)」を発行し、これが「ペソ」として広く流通。
この銀貨は英語圏では「スペインドル(Spanish dollar)」とも呼ばれ、メキシコやチリなど多くの国の通貨制度に影響を与えました。
メキシコペソやアメリカドルが同じ「$」記号を使うのも、このスペインドルに共通のルーツがあるからです。
通貨改革:CLEからCLPへ
実は、チリは1975年まで「ペソ」ではなく、「エスクード(Escudo)」という通貨を使用していました。
- 1960年:旧ペソ → エスクードへ(コード:CLE)
- 1975年:エスクード → 再びペソへ(コード:CLP)
エスクード時代の通貨コード「CLE」は、「Chile + Escudo」に由来するもので、
現在では使用されていない「消えた通貨コード」の一つです。
なぜ「CLN」ではなく「CLP」なのか?
メキシコは1993年に通貨改革を行い「MXP(旧ペソ)」から「MXN(新ペソ=Nuevo Peso)」へ切り替えました。
それに対して、チリのペソは「新ペソ」ではなく、かつて使っていたペソへの“回帰”という意味合いが強く、
通貨名に「Nuevo」は使われませんでした。
そのためコードも「CLN」ではなく、シンプルに「CLP(Peso)」が選ばれたのです。
通貨記号とコードの使い分け
- 記号:チリでは「$」または「CLP$」と表記されます(例:$1,000, CLP$1,000)
- コード:国際的な文脈(為替市場・送金など)では「CLP」が正式に使われます
「$」記号はスペインドル由来で、アメリカドルやメキシコペソとも共有されています。
まとめ:CLPに込められた通貨の回帰と継承
- CLP = Chile + Peso のシンプルな構成
- チリはかつて「エスクード(CLE)」を使用していたが、1975年にペソへ回帰
- メキシコの「MXN(Nuevo Peso)」とは違い、チリは「新ペソ」とは呼ばず、旧通貨名を復活
- 「$」記号はスペインドルに由来し、ドル・ペソ系通貨で広く使われている
通貨コード「CLP」には、通貨の回帰と伝統の継承、そして
スペイン帝国時代から続く通貨文化の系譜が込められています。
次回予告:アルゼンチンペソはなぜARSなのか?|通貨コードの由来
→ 南米で最も通貨変遷の激しい国の一つ、アルゼンチン。
そのコード「ARS」に隠された歴史と制度の意図を探っていきます。
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