アルゼンチンペソはなぜARSなのか?|通貨コードの由来

2025.05.18


アルゼンチンの通貨コードは「ARS」。
「AR」はArgentina(アルゼンチン)を示すとして、
「S」は…Peso(ペソ)の“S”? でもそれ、頭文字じゃないはずでは?

実はこの「S」には、アルゼンチンの通貨がたどってきた数々の制度変更が関係しています。
今回は、「ARS」の意味と背景を、通貨の歴史を交えて解説します。


通貨コード「ARS」の構造

  • AR:国コード(Argentina)
  • S:通貨名「Peso」に由来(Second letter)

つまり、ARS = Argentina + Peso
現在のアルゼンチンで公式に使用されているISO 4217の通貨コードです。


なぜ「ARP」ではないのか?

実は「ARP」は、1980年代に使用されていた別の通貨単位のコードです。

年代通貨名コード補足
1983–1985年ペソ・アルヘンティーノ(Peso Argentino)ARP高インフレ期の改革で一時採用された通貨
1992年〜現行ペソ(Peso)ARS過去のコードと明確に区別するため新たに設定

「ARP」はすでに通貨コードとして登録されていたため、
現在のペソには別のコード(ARS)が新たに割り当てられたのです。

語呂の良さよりも、通貨制度の区別と識別性が優先されました。


アルゼンチンの通貨は何度も“新しく”なっている

アルゼンチンでは、20世紀後半から通貨単位が何度も変更されており、
名前は同じ「ペソ」でも、内容も桁も全く異なります。

時期通貨名通貨コード主なレート変換
~1970ペソ・モネダ・ナシオナル(M$n)なし
1970–1983ペソ・レイ(Peso Ley)なし1 Peso Ley = 100 M$n
1983–1985ペソ・アルヘンティーノ(ARP)ARP1 ARP = 10,000 Peso Ley
1985–1992アウストラル(Austral)ARA1 ARA = 1,000 ARP
1992–現在ペソ(Peso)ARS1 ARS = 10,000 ARA = 10億 M$n

通貨記号とコードの使い分け

  • 記号:国内では「$」を使用(例:$1,000)
  • 補助表記:混同を避けるため「ARS$」と明記されることもある
  • コード:国際的な送金や為替市場では「ARS」が使用される

「$」記号はスペインドル由来で、ドル・ペソ系通貨で広く使われています。


まとめ:ARSに込められた通貨の“連続”と“断絶”

  • ARSは「Argentina + Peso」の構成
  • 「S」は本来の頭文字ではないが、コード割り当ての経緯により使用された
  • 過去のペソ(ARP)とは異なる制度下の通貨として、新たなコードが必要だった
  • アルゼンチンの通貨は、同じ名前を保ちながら制度的には大きな変遷を重ねてきた

通貨コード「ARS」は、通貨の“名前”だけでなく“中身”も時代とともに変わっていくことを示す好例です。


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