2025.05.18
南アフリカの通貨コードは「ZAR」。
「Z」はどこから来たのか?「ランド(Rand)」という名称の由来は?
今回は、通貨コード「ZAR」に込められた意味と、南アフリカの通貨制度と歴史的背景を探ります。
通貨コード「ZAR」の構造
「ZAR」は、ISO 4217という国際規格で定められた通貨コードです。
構成ルールは以下のとおり:
- 最初の2文字:国コード → ZA(Zuid-Afrika:オランダ語で「南アフリカ」)
- 3文字目:通貨名の頭文字 → R(Rand)
つまり、ZAR = ZA(南アフリカ)+ R(ランド)という構成です。
「ZA」は、英語の「South Africa」ではなく、
オランダ語で「南アフリカ」を意味する “Zuid-Afrika” に由来しています。
現地のアフリカーンス語では「Suid-Afrika」と表記されており、
公用語としても「Republiek van Suid-Afrika(南アフリカ共和国)」の形で使われています。
なぜオランダ語が採用されたのか?
これは、ISO国コードの策定時点での国際的な認知と整合性が影響しています。
- アフリカーンス語はオランダ語から派生した地域言語で、当時は国際的な認知度が低かった
- 一方、オランダ語は地名や国名の語源として広く知られており、歴史的整合性が高かった
- ISOではこうした背景から、最も語源に忠実で国際的に通用する形が選ばれる傾向があるため、
「Suid-Afrika」ではなく「Zuid-Afrika」が採用されたと考えられます。
「アフリカーンス」の語源とオランダ語の接尾辞
「アフリカーンス(Afrikaans)」は、Afrika(アフリカ)+ -ans(〜の)というオランダ語の構成です。
英語で言うと “African” や “Africa’s(アフリカの)” にあたります。
オランダ語では、「-s」や「-se」といった接尾辞が “〜の”や“〜に属する” を意味し、
所有格や形容詞のような役割を果たします。
「Afrikaans」はつまり、“アフリカの言葉” を意味する形容詞から派生した名称なのです。
「ランド(Rand)」という名称の由来
「ランド(Rand)」という通貨名は、
南アフリカ最大の金鉱山地帯であるウィットウォーターズランド(Witwatersrand)に由来します。
この地域は、ヨハネスブルグを中心とした金鉱の中心地であり、
南アフリカの経済発展に大きな影響を与えました。
「Rand」はオランダ語やアフリカーンス語で「尾根」「山脈」の意。
豊かな金鉱地帯の象徴として、通貨名に採用されました。
ランドの導入と通貨制度の変遷
- 1961年:南アフリカ共和国の成立とともに、
旧通貨「南アフリカ・ポンド(South African Pound)」に代わり、
「ランド(Rand)」が導入されました(1ポンド = 2ランド) - 十進制度の採用:
1ランド = 100セントという十進制度が導入され、計算の簡略化と制度近代化が進行 - 共通通貨圏の形成:
南アフリカランドは、ナミビア、レソト、エスワティニといった周辺諸国でも
法定通貨として使われ、等価交換が維持される通貨連合が構築されています。
通貨記号「R」とコード「ZAR」の使い分け
- 実際の価格表示では「R」と表記されることが多い(例:R50)
- 国際送金や為替市場では、ZARというコードが正式に使われます。
まとめ:ZARに込められた歴史・言語・地理の重なり
- ZARは、ZA(Zuid-Afrika)+ R(Rand)という構成
- ZAはオランダ語の国名に由来し、現地アフリカーンス語では「Suid-Afrika」と表記される
- アフリカーンス語はオランダ語由来で、「Afrikaans=アフリカの(言葉)」という意味を持つ
- 「ランド」は金鉱地帯ウィットウォーターズランドにちなんだ名称
- 十進制度と共通通貨圏により、制度的・地域的に重要な通貨となっている
- 記号「R」とコード「ZAR」は、国内外での使い分けを前提とした設計
南アフリカランドは、その名称とコードに、
地理・歴史・言語のすべてが凝縮された通貨です。
次回:ブラジルレアルはなぜBRLなのか?|通貨コードの由来
→ 南米最大の経済大国ブラジルの通貨「レアル」。
そのコード「BRL」に隠された意味と、通貨制度の変遷を探ります。
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