スイスの通貨コードは「CHF」。
“F”はフラン(Franc)の頭文字として納得ですが、“CH”は…?
Switzerland のどこにも “C” も “H” も含まれていません。
一体この「CHF」は、どのような意味を持って付けられたコードなのでしょうか?
今回は、スイスフランの通貨コード「CHF」に込められた意味と、
スイスという国の多言語・中立性とどう関係しているのかを解説していきます。
通貨コードはどう決められている?
CHFは、ISO 4217という国際規格で定められた3文字の通貨コードです。
基本的な構成ルールは以下の通り:
- 最初の2文字:ISO国コード(ISO 3166) → CH(?)
- 3文字目:通貨単位の頭文字 → F(Franc)
「F」はフラン(Franc)を意味していると分かりますが、
“CH”は「Switzerland」と結びつかないように感じるかもしれません。
この「CH」には、スイスという国の成り立ちと姿勢が色濃く反映されているのです。
「CH」はどこから来た?スイスのラテン語名
スイスの英語名は「Switzerland」。
でも、通貨コードや国コードに使われているのは“SW”ではなく“CH”——一体なぜでしょうか?
「CH」は、スイスの正式なラテン語表記
Confoederatio Helvetica(コンフェデラティオ・ヘルヴェティカ)
の頭文字に由来しています。
“Helvetica” は、古代ローマ時代に現在のスイス周辺に住んでいた「ヘルヴェティイ族」に由来し、
現在でもスイスの切手、硬貨、パスポートなどに見られる中立的な表記です。
ちなみにこの「Helvetica」という綴りは、ラテン語で「〜の」を表す形容詞語尾“-ica”が付いた形で、
Helvetia(ヘルヴェティア)=スイスの古称が元になっています。
このような変化は、Arabia → Arabica(アラビア種)のように他のラテン語由来の単語でも広く見られます。
なぜラテン語?多言語国家スイスの配慮
スイスは、ドイツ語・フランス語・イタリア語・ロマンシュ語の4つを公用語とする多言語国家です。
どれか1つの言語で国名を表すと、他の言語話者に偏った印象を与えてしまう可能性があります。
そこで、中立性を保つ目的で「ラテン語」が国際表記として採用されました。
その結果、国コードは「CH」、通貨コードは「CHF」という形になったのです。
スイスフラン「CHF」の持つ意味
- CH:スイスのラテン語名「Confoederatio Helvetica」
- F:通貨単位「フラン(Franc)」の頭文字
- 英語やフランス語に偏らず、中立的かつ歴史的な背景を持つ表記
スイスは永世中立国として知られており、
通貨コードにおいてもその中立性や多文化性を反映した設計がなされているのです。
まとめ:CHFに込められたスイスらしさ
- CHFは「CH(ヘルヴェティア連邦)」+「F(フラン)」の組み合わせ
- CHはラテン語名から取られた、中立的な国コード
- 多言語国家スイスだからこそ、ラテン語という選択肢に意味がある
- 通貨コードにも、スイスの文化的・政治的な哲学が込められている
次回:人民元はなぜCNY?|通貨コードの由来
→ なぜ中国元ではなく“人民元”?
そして“CNY”と“CNH”の違いとは?中国通貨コードの複雑な構造を解きほぐします。
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